わかめごさいのゴミ箱

死して尚インターネットに居座り続ける男

わかなの日記1

 

 

 

 

イルミ「結局さ、ネオさんとセラさんってどっちが強いの?」

 

 

 

 

 

大地が裂け海は荒れ狂い天を揺るがし神をも恐れさせる…って程でもないけど、この戦いは今思えばイルミちゃんの軽率な一言で始まってしまったんだった。

わかな「ちょっと…イルミちゃん!」

イルミ「何よ。気になったんだもん」

セラ「…どちらが強いとは一概には言えないでしょうね。そもそもここまで培ってきた戦闘力は別のベクトルで鍛えたものだし…戦場の質や量、敵の作戦も違ってきている訳だからね。」

ネオ「いやいやいやいやどう考えてもセラの方が強いに決まってるだろ!俺一般人ですよ一般人!見てくれよこの非力な腕」

イルミ「…(つんつん)」

イルミ「とんでもない剛腕だけど…それを言うならセラさんのほうが腕は細いわよ」

ネオ「そうは言うけどさぁ、こいつよくわからん魔力とか持ってるし人間如きの俺が太刀打ちできる訳なくない?」

わかな「鏡見たことあります?十分人間離れしてますよ」

桜欄「魔力…ねぇ。でもネオもサンダーソードとか持ってるじゃない?」

ネオ「や、これは俺の力じゃないんだよ そういう剣なんだ 持ってみてよ」

そう言ってネオさんはサンダーソードをわかなと桜欄に投げてパスする。非力の権化である私と桜欄さんは当然受け取れるはずもない。

桜欄「あちょっ…!」

 

ガランガランガラン!

 

不揃いな刀身をしたその剣は大きな音を立てて地面に落ちる。その時剣に篭っていた魔力が迸り、雷撃となって最も近くにある金属に向けて掃射される。身体程大きな剣を肌身離さず持っていた白髪の女性は、咄嗟に構えてその稲妻を切り捨てた。

 

 

セラ「あらあら…随分危ないことしてくれるじゃない…」

 

 

眩い閃光から出てきた彼女は、今まで制御していた青白い炎を身体中から吹き出す。明確な殺意と共にゆっくりと1歩、また1歩、ネオさんに向けて歩き出した。

わかな「あ、あわわわわわ」

イルミ「…逃げる?」

桜欄「これは…まずいことになったわよ…」

 

ネオ「ちょちょちょちょっと待て!!!今の絶対俺のせいじゃないだろ!!!こんな軽い剣も持てなかったこいつらが悪くないか!?!?ほら!!!こんなのひょいっ!よ ひょいっ!」

セラ「随分と責任転嫁がお上手なのねぇ…丁度いいじゃない、白黒つけましょうよ…どちらが強いか…」

 

逃げ遅れてもたもたしている私たち3人をを抱えてレジーさんは質屋を後にする。普段の何処吹く風といった表情ではなく、命の危機に瀕した時のキツく眉を結び歯を食いしばった、あの顔だった。

 

ジー「…あの争いを止められる人間が…世界にいるだろうか…」

イルミ「あたしたち、なんかとんでもないものに巻き込まれちゃったわねw」

わかな「イルミちゃんのせいでしょ!!!!どうするの〜〜〜!!!!!」

ぽかぽかと頭を叩くわかなを桜欄が引き剥がす。

桜欄「責めててもしょうがないわよ!…どうしましょ…」

 

桜欄「というか、質屋のお兄さん…逃げ遅れちゃってない?」

ジー「…!しまった!」

イルミ「レジーさんもたまにうっかりさんなとこあるわよねぇ」

わかな「言ってる場合か!」

 

ジーさんが救出に戻ろうとした、

その時━━━━━━

 

 

 

 

ドゴォォォォン!!!!

 

 

 

 

轟音と共に吹き飛ぶ、木造の平屋。まさしく私たちが先程まで居たあの質屋だ。

わかな「ひっ……!!!」

イルミ「嘘…」

桜欄「…少しでも逃げ遅れてたらひとたまりも無かったわね…」

ジー「…」

 

木端が地に落ち、煙が揺らいで薄くなった頃…

桜欄「…!?どうなってるの!?」

イルミ「えっ!?」

ジー「…!」

みんなが息を飲む。

わかな「えっ?えっ?何が見えるの?」

生まれつき弱視の私には更地しか見えない。

ジー「…人影が…3つだ。立っているのは1人だけ。」

その言葉を聞きもしない内に、私は走り出していた。状況の把握がしたかったと言うより、私自身も気になっていたのだ。あの二人のどちらが強いのか。

足があまりに遅すぎて、結局レジーさんに抱えてもらった。

 

 

 

結論から言うとエピセンターに立っていたのは、ネオさんでもセラさんでも無かった。

わかな「質屋の、お兄さん…?」

 

 

質屋「毎度ご贔屓にありがとうございます」

 

 

質屋さんはいつもの笑顔でニッコリと笑うと、気を失っている2人の首根っこを持っていた手を離す。

どさり、と音を立てて2人は床に這いつくばる。

 

臨戦態勢をとるレジーさんを他所に質屋さんが二言目に話した内容には心底驚かされたし、冗談であって欲しいと思ってしまった。私たちの最高戦力2人が気絶しているのにも関わらず、その言葉で私たちの緊張を解き安心させるのには十分すぎた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

質屋「弁償はしてくださいね」